Faber Company 開発ブログ

ファベルカンパニーと読みます。

人工知能学会(JSAI2024@浜松)で最先端のAI研究を聴講してきました

Faber Company 新規開発ラボチームで研究開発に携わっている稲岡です。

弊社が協賛する 2024年度人工知能学会全国大会 (JSAI2024) が5月28日~31日に浜松市で開催されました。

本記事ではその中で稲岡が特に注目したAI研究をご紹介します。

注目した研究

コピーライターの思考プロセスを用いたFine-Tuning手法の提案および評価実験

原稿は以下から確認できます。

doi.org

この研究は、広告キャッチコピーの作成においてコピーライターがChatGPTを用いることでどのように品質が変化するかを評価しています。 人手およびChatGPTを用いて作成したキャッチコピーに「心が動く」「新しい発見」「時代性がある」「意外性がある」「チャーミング」「納得性がある」の6つのグループ項目評価と総合評価を実施しています。 評価の結果、素のChatGPTを使った場合は総合評価が低下し、項目評価も向上しませんでした。 そしてChatGPTを「伝えたいこと」「キャッチコピー」「伝えたいことからキャッチコピーに至る理由(思考プロセス)」でファインチューニングすることで、総合評価と項目評価の両方が向上しました。 なお総合評価がもっとも高かったキャッチコピーは、コピーライターがChatGPTを使わずに作成したものでした。

大規模言語モデル (LLM) のファインチューニングは広く行われていますが、思考プロセスを出力として学習させる手法は新鮮に感じました。 専門家の知識をAIに組み込む方法として広く応用できそうです。

RLHFにおける分布シフトの評価

原稿は以下から確認できます。

doi.org

大規模言語モデル (LLM) などの生成モデルを人間の選好に合わせて強化学習する手法として、RLHF (Reinforcement Learning from Human Feedback) があります。 RLHFでは、生成モデルの出力に人間の選好を付与することで構築した選好データセットを用いて報酬モデルを学習し、その報酬モデルを用いて生成モデルを強化学習 (Proximal Policy Optimization; PPO) します。 こちらの研究では、選好データセットとして外部の公開データセットなどを用いることによって生じる分布シフトがRLHFにどの程度悪影響を与えるのかを評価しています。 評価の結果、分布シフトが性能を低下させることが確認され、選好データセットを作成した言語モデルの性能が良いほどその影響が軽減されることがわかりました。

RLHFのように人間のフィードバックをモデルに反映させる手法は今後さらに注目されると予想されることから本記事で取り上げました。

SBERTを用いたコールドスタート推薦のためのハイブリッドベース商品埋め込み手法

原稿は以下から確認できます。

doi.org

この研究では、ショッピングサイトなどの行動履歴をもとに商品を推薦する協調フィルタリングの課題であるコールドスタート問題に Sentence BERT (SBERT) を用いてアプローチしています。 過去のセッション情報から遷移前後の商品を正例、ランダムな商品を負例としたトリプレットを作成し、商品タイトルの埋め込み表現間のコサイン類似度をファインチューニングすることで、推薦されるべき商品間の埋め込みが近くなるような表現を学習しています。 評価の結果、ベースラインのコンテンツベース手法よりも精度面で優れており、過去の行動履歴を持たないコールドスタート商品においても精度向上が見られることが確認されました。

既存アイテムの分散表現はあらかじめ計算でき、新規アイテムの分散表現は他のアイテムの影響を受けないため、比較的軽量かつ高速に動作する汎用的な手法として適用範囲が広いことから本記事で取り上げました。

社内報告会

JSAI2024社内報告会の様子
社内報告会の様子(撮影場所:神谷町トラストタワー 24F WeWork )

学会終了後、社内で参加報告会を開催しました。 報告会にはエンジニアだけでなくプロダクトオーナーやプロダクトマネージャーも参加し、プロダクトの価値向上につながる様々な議論やアイデアが飛び交いました。

Faber Company は一緒に働く仲間を募集しています

株式会社Faber Company にご興味のある方は、ぜひ採用サイトをご覧ください!

www.fabercompany.co.jp

株式会社Faber Companyについて

「辺境の知から、“マーケティングゼロ”を実現する」をコンセプトに、企業のWebマーケティングを支援。2005年の創業以来、クライアント企業のSEO施策、コンテンツ制作などの事業を展開。2013年からSEOプラットフォーム「ミエルカSEO」の自社開発を開始し、2015年リリース。職人の手元を再現した「ツール」と高度専門人材による「リソース」支援を通じて、企業のマーケティング生産性を向上し、素晴らしい商品・サービスが、それを必要としている人に届く世界を実現する。

AWS Summit Japan 2024 参加レポート(2日目)

AWS Summit Japan 2024 #AWSSummit が2024年6月20日・21日に幕張メッセで開催中です。
aws.amazon.com

昨日に引き続き、2日目のセッションからFaber Company 開発運用チームから菅原・金子が気になった話題をピックアップして速報します!
※ 1日目の速報レポートは以下の記事をご覧ください fabercompany-dev.hatenablog.com

フォトスポットもおしゃれですね!

Amazon Aurora の技術とイノベーションDeep dive

公式概要

Amazon Aurora は、ストレージとコンピューティングを分離する革新的なアーキテクチャと、グローバル データベースや低レイテンシーのリードレプリカなどの高度な機能を備えており、リレーショナル データベースのあり方を再構築します。 Aurora は、オープンソースMySQL および PostgreSQL との完全な互換性を備え、比類のないパフォーマンスと大規模な高可用性を提供する最新のデータベース サービスです。このセッションでは、Aurora I/O-Optimized、Aurora zero-ETL と Amazon Redshift の統合、Aurora Serverless v2 など、Aurora が提供する新機能について詳しく説明します。 pgvector 拡張機能の追加により、ベクター埋め込みの保存と生成 AI のベクター類似性検索のサポートがどのように可能になるかについても紹介します。

登壇者

塚本 真理 様

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 技術統括本部 デジタルサービス技術本部 ISV/SaaSソリューション部 ソリューションアーキテクト

所感(金子)

開発運用チームでもAmazon Auroraにはお世話になっており、特にMySQLバージョンアップ時にはBlue/Green Deploymentを活用することでダウンタイム無しの移行を達成できました。この機能を実装してくださったAWSの皆様には感謝しかないです...!
今回の発表ではRedshiftとのZero-ETL機能やPostgreSQLにおけるOptimized Reads、生成AI関連のタスクで活用できそうなpgvectorなど、多くの機能の紹介がありました。それらは公式サイトでも紹介されているのでここでは割愛しますが、代わりにOptimized Readsの紹介の中で確認していた「DB負荷とALBのレスポンスタイムを比較する」という作業をピックアップします。
今までもスロークエリの調査や高負荷の要因をPerformance Insightsでチェックすることはありましたが、ユーザへの影響を測るためにALBのレスポンスタイム等のチャートと比べたことはありませんでした。技術調査の際にも、常にユーザ目線でのプロダクト価値を念頭に置くことの重要性を改めて感じました。

SaaS 開発とプラットフォームエンジニアリングの未来

公式概要

プラットフォームエンジニアリングは、ガートナーによる「2023 年の戦略的テクノロジーのトップ・トレンド」の一つに挙げられている技術分野であり、SaaS を開発する企業の間でも注目を浴びています。本セッションでは、SaaS ビジネスを展開する企業が、プラットフォームエンジニアリングのプラクティスをどのように開発組織に適用し、AWSアーキテクチャに落とし込んでいくのか、ビジネスとアーキテクチャの両面から説明します。

登壇者

後藤 健汰 様

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 技術統括本部 デジタルサービス技術本部 ISV/SaaSソリューション部 ソリューションアーキテクト

所感(金子)

「利益を維持しながら成長を維持する必要性が高まっている」というビジネス潮流の話から始まり、SaaS商材の戦略動向、それに対してなぜ開発生産性の維持/ 向上が求められるのか、という経営やビジネスのトピックも交えながらのセッションでした。本題であるプラットフォームエンジニアリングについての話では「プラットフォームを作る目的は『認知負荷』を下げること」「Platform as a Product」という重要な観点を紹介しつつ、具体的なゴールデンパスの設計方法やセルフサービス化を達成するために必要なマインド、そしてプラットフォームチームとしての成果をどう評価するか、という話まで、かなり広いスコープをわかりやすく解説していただきました。
当社の開発運用チームでも、複数プロダクトを提供する中で生まれる認知負荷や実装負荷を低減するための手法として、共通基盤を構築する必要性をちょうど考えているところです。今回の発表内容を受け、どのようにプラットフォームチームを立ち上げていくか、戦略を練りたいと思います。

※ プラットフォームチームの立ち上げ、推進にご興味がある方は採用サイトからカジュアル面談の申し込みもお待ちしております!

チームのつながりを Infrastructure as Code でデザインする

公式概要

ソフトウェア開発においてチーム間のつながりが不適切だと、俊敏性が減少し、開発コストが増大します。チーム内においても、異なるスキルやモチベーションを持つメンバー間の壁を取り払うにはメカニズムが必要です。Infrastructure as Code (IaC) はアプリケーション全体の状態と開発者の意図を明確化するため、チームの共通言語としてコラボレーションの基点になります。このセッションでは、日本のソフトウェア開発の現場におけるチームトポロジーや認知負荷について検討し、ビジネス価値を迅速に提供できるチームを作るために AWS Cloud Development Kit (CDK) による IaC を戦略的に活用する方法を学びます。

登壇者

高野 賢司 様

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 技術統括本部 ストラテジック製造グループ 中部ソリューション部 シニア ソリューション アーキテクト

所感(金子)

前半は「チーム構成」と「俊敏性や開発コスト」の関係性とその理想像、そして後半はチーム内外とのコミュニケーションの共通言語としてのIaCの活用方法についての紹介でした。印象深かったのは「インフラの自動化のためにIaCが必要だ」という目線ではなく、前述のセッションと同様に「チーム開発とはどうあるべきなのか、それがなぜビジネス価値や顧客体験に繋がるのか」という目線で語られていた点です。
また、最後の方ではチームトポロジーにおけるストリームアラインドチームとプラットフォームチームの在り方についても言及されており、CDK大好きかつ現在進行形で開発組織やチーム体制を考えている私にとって、とても価値のある発表でした。特に「職能でチームを分けることは、個人の成長機会や意欲を削いでしまう可能性がある」という点が重要だと感じたため、エンジニア自身のキャリアと組織目標のどちらにもいい結果をもたらすチームを作るため、日々精進していきたいと思います。

アーキテクチャ道場 2024!

公式概要

アーキテクチャ道場が今年も帰ってきました!優れたアーキテクチャを設計するためのプラクティスを AWS のソリューションアーキテクトと一緒に学びましょう。このセッションでは、ソリューションアーキテクトがお題に沿って実際に設計したアーキテクチャをレビューしながら、アーキテクチャを設計する際の着眼点、良いアーキテクチャが備えている性質、モデリングの手法やデザインパターンなどを深堀り解説します。

登壇者

内海 英一郎 様

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 技術統括本部 チーフテクノロジスト

馬渕 俊介 様

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 エンタープライズ技術本部 サービスグループ トラベル・交通・物流ソリューション部 ソリューションアーキテクト

山﨑 翔太 様

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 ストラテジックインダストリ技術本部 デジタルソリューション部 部長 / シニアソリューションアーキテクト

所感(金子)

前からYouTubeで見ていたアーキテクチャ道場を、とうとう生で観ることができました!!! 学びが多く、ただただ自分の未熟さを痛感する時間でした ...
1日目と今日のセッションであらかじめ「サーキットブレーカー」や「エクスポーネンシャルバックオフ」という単語を目にしていたため、2つ目のお題の答えには割と最初から正解に近づけていたかなという小さな自己肯定感を持ちつつも、山崎さんほど詳細かつ明快に説明するスキルはまだ私にはありません。これからも技術と真摯に向き合いつつ、言語化と実現力の2点を重点的に鍛え上げていきます。
そして、最後に内海さんがおっしゃっていた「現実世界には強くて柔軟な仕組みが多く、レジリエンスのヒントがたくさんあるので注意深く観察してみよう」というアイデアを日々実践し、技術に活かせそうなアイデアを貪欲に収集していきたいと思います!

小規模体制でも開発できた電動車椅子の自動運転サービス~ AWS IoT 、サーバレスのクラウド活用~

公式概要

すべての人の移動を楽しくスマートにする! 既に世界 25 か国以上で採用が進む日本の近距離モビリティ WHILL (ウィル)。その自動運転サービスは、 PoC の壁を乗り越え 2020 年に世界で初めて商用化まで実現しました。従来の"モノづくり"に捉われず、"サービスづくり"の視点で MaaS としての新たな移動の在り方を追求。 小規模チームながらどのように AWS のサーバーレスや IoT サービスを駆使し、実証やコンセプトで終わらず、人を乗せた近距離の自動運転サービスを社会実装できたのか。移動の自由を切り拓く WHILL社の取り組みをお届けします。

登壇者

福田 慧人 様

WHILL株式会社 CTO

所感(菅原)

ここまでの事例セッションは大手からのものが多かったのですが、創業12年の非上場企業の事例ということでセレクトしました。

羽田・成田空港で自動運転を行っている電動車椅子でおなじみですが、その WHILL がエンジニア1~2人という超小規模なチームで社会実装を実現したことに驚きです。 このスピード感・規模感は徹底したサーバレス構成で実現されており、最初から海外展開を狙った柔軟性の高いシステム構成を事業展開上のアドバンテージとしてフル活用できているイメージを受けました。

ソフトウェア、ハードウェア、サービスが近づくことでより高い付加価値を提供する、まさにテックベンチャーの戦い方。その片鱗を垣間見ることができました。

富士通AWS と共に取り組む『攻めのモダナイゼーション』

公式概要

富⼠通と AWS が、共同で提供するクラウドソリューションによる『攻めのモダナイゼーション』を紹介します。今企業では、その⽣命線であるメインフレームUNIX で稼働中の基幹情報システムを安全・確実に最適な DX 基盤に移⾏することにより、データ利活⽤・事業継続性確保・変化対応⼒強化を加速することが求められています。このセッションでは、富⼠通の豊富な IT 経験と AWS の先進的なクラウド技術が融合することによって、成功したモダナイゼーションの事例を中心に解説します。

登壇者

伊井 哲也 様

富士通株式会社 モダナイゼーションナレッジセンター長 SVP

所感(菅原)

Faber Company ではオンプレミス環境・メインフレームは扱っていませんが、依然としてソースコードのモダナイゼーションは関心事のひとつです。

セッション内で、まず「モダナイゼーションの目標は事業変革・経営改革」とはっきり宣言なされており、はっとさせられました。 なんのためにモダナイゼーションをやるのか?は常に説明する必要がありますが、エンジニアだけの組織では抜け落ちてしまいがちです。 モダナイゼーション、リファクタリングの目標はベトナム支社のエンジニアからも説明できるくらいチームで咀嚼しておく必要を感じました。

セッションで扱われていたアプリケーションは基幹情報システムなので、当社が提供するようなウェブサービスに比べて品質の要件が厳しいです。 コードベースの移行にあたって、10% 程度移行してみてその後の継続可否を判断することや、テストプランの策定・運用方法は、ミエルカの品質向上においても活用できそうです。

総括

1日目レポートでも触れた通り、イベント全体を通して生成AIに対して高い期待が寄せられていました。2日目も同様、業種を問わず、手持ちのデータをどのように活かすかがさまざまな事例から提案されていました。

もちろんマーケティング業界も例外ではありません。お客様に価値ある意思決定をしていただくために、「よりよいデータを集め、よりよく活用すること」を突き詰めていきたいです。

もうひとつ感じたのがセキュリティ意識の高まりです。データを活用するにはセキュリティ対策は切っても切り離せませんし、最近の世界情勢も相まってサイバーセキュリティに対する需要も高まっています。

当社のビジネス成長の成功には、堅牢なセキュリティとそれを実現するための継続的な開発組織の成長が不可欠です。クラウドの環境を活かしつつ、これからも安心して使っていただけるサービス作りに努めていきます。

AWS Summit Japan 2024 参加レポート(1日目)

AWS Summit Japan 2024 #AWSSummit が2024年6月20日・21日に幕張メッセで開催中です。
aws.amazon.com まずは1日目、本日のセッションから、Faber Company 開発運用チームから菅原・金子が気になった話題をピックアップして速報します!

AWS Summit Japan 2024 看板
AWS Summit Japan 2024 は看板もオシャレ!

AWS IoT SiteWise を活用したスマート工場の実現

公式概要

スマート工場や工場IoTといった言葉は世の中にだいぶ定着したように思いますが、具体的な実現イメージがわからず困っている方も多いのではないでしょうか。本セッションでは、スマート工場実現に向けたデータ収集のパターンを改めて整理します。AWS re:Invent 2023 にて多くの機能追加が発表された AWS IoT SiteWise にフォーカスを当てて、活用方法や新機能をご紹介します。また、IoT ワークロードにおける生成AI活用例についてもご紹介します。

登壇者

新澤 雅治 様

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 サービス&テクノロジー事業統括本部 コアサービスソリューション本部 IoTスペシャリスト ソリューションアーキテクト

所感(菅原)

機械学習を活用して設備故障を予測し、先回りしてメンテナンスすることで保守計画を立てやすくする「予知保全」の考え方は、ウェブサービス運営においても役立つ点が多そうでした。 製造現場のニーズを拾って、必要なデータを入れるだけのサービスに落とし込む手法はいかにもAWSらしいといったところ。

生成AIとの連携に関しても言及があり、故障原因の推測や対処方法の提案が検討されていました。サービス監視機構にも取り込みたい!

1,000 を超える Web サイトを少人数で運用するソニーミュージックソリューションズ様のオブザーバビリティ実現例~クラウド運用をリアクティブからプロアクティブに!~

公式概要

ソニーミュージックソリューションズ様は、限られた人員で 1,000 を超える Web サイトを運用し、サイトの速度や表示に関する問い合わせにも日々対応されていました。そのような環境下で、「少人数運用でも安定稼働」を実現するというビジョンを掲げられていました。本セッションでは、同社がそのビジョン実現に向けて、どのような取り組みを日々行ってこられたかをご紹介いたします。成功した施策や乗り越えてこられた課題など、実際の経験に基づくリアルな内容をお話しいただきます。反応的な対応から一歩進んで、「未来に向けた継続的な改善」を実現するための手法や考え方について、同社の実践を通じてご理解いただければ幸いです。少人数での大規模システム運用におけるノウハウを存分に学んでいただけるセッションです。

登壇者

角田 勝義 様

Dynatrace合同会社 AIOps エバンジェリスト

菊池 一貴 様

株式会社ソニー・ミュージックソリューションズ デジタルプロデュース本部 Webアプリケーションオフィス インフラストラクチャールーム システムプランナー

所感(金子)

発表の序盤で共有されていたシステム運用における悩みの紹介の時、私を含め周りも「あるある~~」となっていました。

解決案として挙げられていた「ステークホルダー (関係者) が調査できるようなダッシュボードや体制を整える」という部分は開発運用チームでも長らく議論されていましたが、具体的なアプローチに至った例が少なかったのが現状です。重要なのは「エンジニア以外のステークホルダーでも原因を調べられる仕組み」と「同じ指標(発表では「処理速度=ユーザの待ち時間」を例に挙げていらっしゃいました)でエンジニアとステークホルダーが語り合う」こと。

このような「エンジニア以外の関係者との協働」はシステム運用以外のシーンでも重要となる活動です。すべての関係者が同じ言葉で問題に向き合えるよう、開発運用チームの文化や体制をより磨き上げていきたいですね。

AWS で実現するデータガバナンス

公式概要

不確実性の高い VUCA の時代において、データは企業にとってヒト・モノ・カネに比類する重要な経営資源であり、ビジネス上の競争優位や付加価値を生むための源泉となっています。そのため、大量に生成されるデータを企業全体として適切に管理し、従業員の誰もがデータから継続的に価値を引き出すための仕組みを構築することが求められています。このセッションでは、AWS のデータガバナンスフレームワークを紹介し、Amazon DataZone をはじめとするAWSが提供する豊富な関連サービスによる、データガバナンスを実現するための手法とベストプラクティスについて解説します。

登壇者

大薗 純平 様

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 シニアアナリティクススペシャリストソリューションアーキテクト

所感(金子)

Amazon DataZoneを今まで知らなかったんですが、これからデータ分析を始める企業で、このサービスを使わない手はないですね。

特に私が今回のセッションで感動したのは、「データへのアクセス権限」と「アクセス申請」機能の存在です。データ分析を効果的に進めるためには、プロデューサー(データの提供者)とコンシューマー(データ分析の担当者)の連携、そしてそのデータを共有、管理できる仕組みが必要になります。Amazon DataZoneは、そのようなニーズも含め、組織全体でのデータカタログ化、統制を支援するようです。

また、セッションの中では機能の説明だけでなく、組織としてデータ分析にどう向き合っていくべきなのか、という点も取り上げられていました。最初からデータガバナンスによる統制を目標にするのではなく、まずはビジネスイニシアチブをサポートするという前進の姿勢で向き合いつつ、その中でデータガバナンスの適用範囲を徐々に広げていくことが重要とのことでした。

FinOps 実践企業、横河電機事例にみるクラウドコスト管理の高度化 ~約 38% の支出削減を実現した秘訣とは~

公式概要

クラウド投資をビジネス成果に紐づけ、効果的に管理することで、企業におけるクラウド戦略の意思決定をスムーズに⾏えるようにするためのベストプラクティスとして FinOps が注⽬されています。本セッションでは、FinOps Foundation が提唱するクラウドコスト管理のグローバルスタンダードとなる⽅法論 FinOps について、その実践を⽀えるサービスである Apptio Cloudability についてを解説し、ご活⽤いただいているユーザー企業、横河電機様よりお取り組みについて語っていただきながら、今後ますます重要となるクラウドコストマネジメントについての理解を深めていただきます。

登壇者

田中 友樹 様

Apptio, an IBM Company ソリューションコンサルタント

森田 実 様

横河電機株式会社 デジタル戦略本部 EDXビジネスプロモーションセンター センター長

所感(菅原)

チームにコスト最適化のための責任者を置き、全員が数字を見られるようにすることで、DX 施策を推進しながらもコスト最適化を進めていく事例が共有されていました。

折からの円安を受けて弊社開発運用チームにも原価削減の強い圧力がかかっています。旗振り役を決めること、現状を見える化すること、こういった基礎を徹底的に続ける重要さを改めて認識しました。

この取り組み方はクラウド利用料だけでなく技術負債にも(もちろん日々の売上にも)応用可能だと思います。 今後、よりよいサービス提供体制をめざしてチーム構成を考えていくうえで押さえておきたいポイントをいただけました。

AWS 環境におけるセキュリティ調査の高度化と生成 AI 活用

公式概要

情報システムをとりまく脅威を検出・対応し、ビジネスへの影響を最小限にすることはお客様の大きな関心事です。そのためにインシデント対応全体の流れを把握し、AWS の特性やサービスを活かして素早くセキュリティ調査を行い対応へ繋げることが重要です。しかしセキュリティ調査は、AWS CloudTrailやAmazon GuardDuty など多様なデータソースを組み合わせ、何が起きたのかを紐解いていく高度な活動です。本セッションでは、セキュリティ担当者が複雑で大規模なデータの分析へ立ち向かうためのプラクティスと、それを支える生成 AI の活用について紹介します。

登壇者

勝原 達也 様

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 セキュリティソリューションアーキテクト

所感(金子)

みなさんはAmazon Detective使ってますか?使わなきゃいけない場面には出会いたくないですが、今回のセッションを聞いたら触ってみたくなる機能が盛りだくさんでした。

Amazon GuardDutyは弊社AWSアカウントでも有効にしているんですが、実際に調査をするとなるとアプリの実行ログやALBのアクセスログなど、様々なログを行ったり来たりしながら、複雑なクエリを書かなければいけない印象が強かったです。

Amazon Detectiveは「クエリの作成」や「ログの場所探し」といった「必要だけれど本質的ではない作業」の負荷を下げてくれるサービスのようで、Amazon InspectorやAmazon GuardDuty、ALBやDNSのログを自動で紐づけて提示する機能があるとのことでした。実際の画面を見ながらの説明では、見つかった攻撃がSecurity Hubのどの項目と関連しているか、どのIAMユーザのアクセスキーがどのリソースにアクセスしているか等、こちらが知りたい情報に画面クリックだけでたどり着けるような印象を持ち、調査スピードが格段に上がると確信が持てるサービスとなっていました。

総括

今回の AWS Summit は、どのセッションでも生成 AI 活用に言及されていたことが印象的でした。

AI 活用があたりまえになっていく中で、どんな価値を提供できるか? マーケティング業界にとどまらない事例も多く紹介されており、刺激になりました。

明日のレポートもお楽しみに!

ベトナム支社で開発組織の課題を徹底議論してきました!

こんにちは。Faber Company開発運用チーム エンジニアリーダーの金子です。
2024年5月13日~14日の2日間、ホーチミンにあるFaber Vietnam Co., Ltdに出張してきました。
前回訪れたのはコロナウイルスが流行る前だったので、約5年ぶり (!) の訪問です。

Faber Company について

株式会社Faber Company(ファベルカンパニー)は、「辺境の知からマーケティング・ゼロを実現する」を使命として、企業のマーケティング生産性の向上を目指しています。 蓄積したマーケティングの知見を現場につなげるため、さまざまなサービスを展開しています。

ミエルカSEOの開発は、日本の Faber Company とベトナムにある子会社 Faber Vietnam Co., Ltd とで行われています。 Faber Company で働くエンジニアは、ベトナムのメンバーと直接英語でやりとりしながらプロダクトの開発・運用を行っています。


ベトナム支社はどんなところ?

実際のオフィスの雰囲気はこちら。
ビルのフロアを貸し切っていて、約30名ほどのベトナム人エンジニアが働いています。
日本人エンジニアはたったの7人なので、約4倍の規模ですね。

Faber Vietnamの入口
オフィスのあるビルの入り口はこんな感じ

Faber Vietnam 会社ロゴ
オフィスに入ると、壁には大きく会社ロゴが!

Faber Vietnam プロダクトロゴ
ミエルカシリーズの全プロダクトロゴも飾ってあります

メンバー紹介も近々投稿しますので、ご期待ください!

1日目

メンバーとの顔合わせ

5年ぶりということで、全メンバーの席を回って顔合わせ (と熱いハグ 🫂) をしました。 初めて対面で会うメンバーもいれば久しぶりに会うメンバーもいて、話が弾んだり、改めて英語の壁にぶつかったり ...
日頃から一緒に仕事はしていましたが、オフラインのコミュニケーションも大切だなと早速感じました。

リーダーと一緒に組織課題を話し合う

Faber Companyの事業が成長するにつれ、Faber Vietnamにも多くのメンバーが新しく参加してくれました。しかし、メンバー構成がどんどん変わっていく中、あまり組織構成自体は変わっていないのが現状 ...
そこで、今後 10 年の成長を支えられる開発組織に進化するべく、現状の課題と解決案についてリーダーと膝を突き合わせて議論!日頃からオンラインでも話しているものの、オフラインだとボディランゲージや目線などの非言語的コミュニケーションも伝わりやすく、熱い議論になりました。

話し合った内容の一例を紹介します↓

  • べンチャーの機動力を残しつつ、より多くの成果と高いサービス品質を維持、向上する方法
  • 組織構成の変革と文化づくりを通して、堅牢さと柔軟さをどう底上げしていくか
  • ひと月前に発足した、プロダクト横断型の調査チームの効果 (こちらも機会があれば紹介します)
  • その他、日頃抱えている課題の共有 (ベトナム側と日本側での情報格差、ドキュメントの重要性への認識合わせ、メンバーの教育体制、など)

そして、夜は …

🎉🎉🎉🎉 パーティー 🎉🎉🎉🎉
出張の 1 ヵ月ほど前から勉強していたベトナム語も交えながら話す中で、仕事だけでは得られない 💪🏻💪🏻圧倒的フレンドリーシップ💪🏻💪🏻 を感じました。

Faber Vietnam 夜のパーティ
ベトナム支社のみんなが参加してくれました

Faber Vietnam 小集合写真
みんな陽気でフレンドリーな性格です
Faber Vietnam ホアンさん
こちらは開発リーダーのホアンさん。ミエルカSEO開発初期メンバーで、もう10年近くミエルカと過ごしています。

2日目

メンバーとのペアワーク

1日目の話し合いの中で「もっとベトナムと日本の連携を増やしていこう」というネクストアクションが挙がりましたので、「鉄は熱いうちに打て」ということで、2日目はさっそくメンバーとの時間を作ることにしました。
今まではなかなか実施できていなかったペアコーディングやレビューをはじめ、「この機能はどういう背景で作ることが決まったのか」「これによってユーザはどのような価値を得られるのか」など、日頃ベトナムメンバーが接することの少ない、ユーザや他部署のメンバーの話も織り交ぜながら一緒に作業しました。

この日は午後にお客様からフィードバックを受け取るミーティングがあり、私はそちらに参加していましたが、その中で受け取ったご意見を即座にメンバーに伝え、いつもは距離が遠いユーザを身近に感じてもらう取り組みにも挑戦してみました。

改めて、ベトナムリーダーから期待を受け取る

1日目の話し合いの中で「組織課題に対して全力でコミットする役割 (VPoEなのかEMなのか...)を置くことで、他メンバーが今よりも技術に集中できる体制を作ろう」というものがありました。そのうえで、リーダーから私に「そのポジションを担ってくれ」という期待の言葉をもらい、改めて自分自身の役割や立場を見直す必要性と、やるしかない!という決意を持ちました。

今回の出張を振り返って

振り返ってみると、あっという間の2日間でした。ベトナムメンバーからも「次はもっと長くいてよ!」という声もいただき、嬉しかったです。

今回の出張では、組織の課題を集中的に議論し、課題に対しての共通認識を持つことができました。 あとはこの課題に対してどう解決していくかを考え、組織内外に提案、推進していくことが重要です。私も、そのポジションを担う役割として、今まで以上に脳に汗をかいていきたいと思います。

Faber Company は一緒に働く仲間を募集しています

株式会社Faber Company にご興味のある方は、採用サイトをご覧ください!

ある新卒エンジニアの一年間(前編)

はじめまして。Faber Company 開発運用チームでエンジニアをしている菅原です。

2023年4月に入社し、無事に一年目を乗り越えたところで、入社から一年間を前後編で振り返ってみたいと思います。

Faber Company について

株式会社Faber Company(ファベルカンパニー)は、「辺境の知からマーケティング・ゼロを実現する」を使命として、企業のマーケティング生産性の向上を目指しています。

蓄積したマーケティングの知見を現場につなげるため、さまざまなサービスを展開しています。この記事では、コンテンツSEOを通して、企業メディアの成長を支援するオンラインツール「ミエルカSEO」を取り上げます。

ミエルカSEOの開発は、日本の Faber Company とベトナムにある子会社 Faber Vietnam Co. Ltd とで行われています。Faber Company で働くエンジニアは、ベトナムのメンバーと直接英語でやりとりしながらプロダクトの開発・運用を行っています。


内定~インターンシップ

Faber Company からは 2021年2月末ごろに、2023年4月入社で内定をいただきました。入社までの間、2022年6月頃からインターンシップとして勤務をはじめました。

ミエルカSEO 管理画面の改善

インターンシップ開始後、一番最初の仕事になったのがミエルカSEOの社内向け管理画面の改善です。この管理画面は社内のカスタマーサポートチーム(以下、CSサポート)が使うもので、アカウント発行や契約更新などの機能があります。

アカウント一覧画面の高速化

ミエルカSEOには、他サービス由来のものも含めて、累計数万オーダーのアカウントが登録されています。 開発当初、アカウント件数がここまで増えることは想定していなかったようで、アカウント一覧の表示に15分以上(!)の時間がかかっていました。

調査してみたところ、データベースから全件分の情報をダウンロードしたあと、フロントエンドで検索をかける仕組みになっており、データ転送と巨大な JSON のパースに大抵の時間を使っていることがわかりました。

アカウント情報を返却するエンドポイントにページング機能を導入し、表示するのに必要な情報だけを転送するようにすることで、読み込み時間を2~3秒に短縮し、大幅な高速化に成功しました。

業務を担当するCSサポートのメンバーからは、「体感で40倍以上くらい早くなった気がします!」とフィードバックをいただきました。

Slack メッセージのスクリーンショット

契約更新作業の簡略化

ミエルカSEOの契約は基本的に1年更新です。契約更新のタイミングでCSサポートチームが手動で管理画面を操作し、アカウント情報を更新することになっていました。 ところがこの情報更新画面では、契約期間が1ヶ月単位でしか移動できず、そのうえキーボードからの入力もできなかったため、1年の更新のために12回ボタンを押す必要がありました。

この問題を解消するため、jQuery プラグインで実現されていた契約期間の入力を Web 標準の input[type="date"] に置き換え、さらに半年・1年後の日付を自動計算するボタンを追加しました。

コード品質指標の計測

管理画面の改善を行っていく中で、コードのリファクタリングが十分に行われておらず、負債の蓄積によって変更速度が落ちてしまっていることに気がつきました。

社内でコードの品質を追跡する仕組みがなく、開発チームのエンジニアも現在地を把握できなくなっているのが大きな原因となっており、リファクタリングの必要性を経営陣に説明できない状況でした。

そこで、まずは開発チームが自発的に課題に対処できるようにするため、指標の計測を始めました。

初めに気づいたのはコード内のスペルミスでした。 スペルが間違っていても動作には支障ありませんが、変数名や関数名が読みにくいことはそれだけで不要なメンテナンスコストにつながります。

GitHub Actions 上で CSpell を実行するワークフローを組み件数の計測をすると同時に、スクラムチームでスペルミス撲滅週間を実施するなど、仕組みと取り組みの両面でコード改善を行いました。 スペルミスの件数だけでいえば、計測開始後半年で 1/4 未満まで改善できました。


入社

2023年4月に正社員として入社した後は、引き続き社内画面の改善を行う傍ら、CSサポートからの不具合報告に対応する業務に入りました。 おもにサポート依頼の翻訳と初期調査を行って、スムーズにベトナムメンバーに引き継げるようにしていました。詳しくは後編でとりあげます。

入社後も画面の高速化や、セキュリティ関係のアップデートなど、メイン機能以外で塩漬けにされてきた技術課題の解消に取り組んでいました。

「××を作りました!」という目立つリリースを打てるわけではありませんが、10年弱にわたって蓄積されてきた課題をソースコードを紐解きながら解消していくのは、なかなか楽しい仕事です。

そしてスクラム

2023年6月頃、メインの機能開発を行っているスクラムチームに合流し、7月からスクラムマスターになりました。

別の会社ですでにスクラム開発を経験しており、スクラムフレームワーク自体にはなじみがありましたが、ベトナムのメンバーと一緒にスクラムで開発していくのには独特の難しさがあります(今も毎日のように悩みながら進んでいます)。

この話題だけでひと記事書けるくらいのボリュームがあるので、また別の機会に公開したいと思います。

ベトナム出張

初年度は9月と12月、2度のベトナム出張がありました。一度目は Faber Vietnam の社員旅行に、二度目は実際の開発業務に参加しました。

スクラムの状況を直接見たり、動かなくなったCIをその場で協力して直したり、日本からでは見えていなかった開発現場の状況が見られたのは大きな収穫になりました。

社員旅行では海水浴もできました🙂


ふりかえって

学生の頃の個人開発では、運用視点を培うことはなかなかできません。

現場からあがってくるリアルな要望に応えていくかたわら、ソースコードの品質を見ていくことで、長期間にわたってプロダクトを運用していくと何が起こるのかを俯瞰できる経験になりました。

後編では、こうして見つかってきた課題にどうやって取り組んでいくか、重ねてきた試行錯誤をお伝えできればと思います。

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